静岡県中部
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「帰ってきた〜」。新鮮な体験の連続だった旅行を終え、木と瓦の佇まいが印象的な我が家にたどり着く。縦格子のドアを開け、奥さまが「1番好きな場所」と話す玄関に入る時、無事に帰宅した安堵感とともに、日常に戻るようスイッチが切り替わる。新築して5年目を迎えたS邸は、本物の木をふんだんに使い、熟練の繊細な手仕事が随所に光る和風住宅。若いS夫妻があえて「和」を選んだ理由は、共通の趣味でもある旅行にあった。
独身時代からお互い海外旅行が好きで、結婚後も子どもが生まれる前は年に2回ほど出かけていたというS夫妻。行き先はアジアや中東が多く、有名な観光地よりも旅行者が少ないエリアの方が好きだった。旅先で過ごすのはホテルの「洋」。だったら、旅で味わう非日常とのメリハリをつけるため、日常生活を過ごす自宅は「和」にしようと決めた。
もちろん、まだ子どもが幼い現在は以前のペースほどではないものの、すでに2回、家族でタイに出かけている。「新築して間もない頃の旅行では、玄関に一歩入ったら木のやさしい香りが漂っていて、家に帰ってきたことを実感しました」と、Sさんは懐かしそうに笑った。
新築時の「和」の選択には旅が大きく影響していたが、実際に暮らし始めてみると、日々の生活でもやすらぎを感じられる瞬間が多いのだとか。「仕事を終えて帰ってきた時、玄関正面にライトアップされているモミジが見えるとほっとしますね」とご主人。奥さまは「リビングの大黒柱に寄りかかってマンガを読むことが、忙しい毎日の息抜き。きれいな造形の天井が好きで、ふと見上げることもあります」。
1尺ほどはあるというクリの大黒柱を、ぐるぐる回ってはしゃぐ子どもたち。風情ある雪見障子を見ながらキッチンに立つ奥さま。その脇に設けたデスクコーナーでは、ご主人が次の旅行先をパソコンで調べている。「今度は夏休みに行けたらいいね」「子どもたちが楽しめるハワイもいいかな」。旅行の相談は自然と声も明るくなる。旅先での非日常を味わうほどに、対極にある我が家がますます愛おしくなるのかもしれない。
屋根勾配を活かした天井にガラス越しのシンボルツリー。床のチーク材はLDKより幅広の材料を使い、ゆったりとした玄関の演出に一役買っている。ともに病院勤務のS夫妻は、職場から帰ってくると、玄関ドアを開けた瞬間に気持ちがやすらぐそう。リビングへと続くオリジナルの建具は、障子の取り外しができるため、季節に合わせた使い分けもできる。手作りのベンチは『櫻 工務店』からのプレゼントだ
リビングはもっとも格式が高いといわれる格天井に。雪見障子は下の障子を上にスライドできる
こだわりのいぶし瓦は一部をガラスに。リビングへやさしい光を落とす
トイレカウンターはケヤキの1枚板で。自然のままの形状が独特の味わいに
玄関収納の無双窓はスライドさせて換気を
手作業で仕上がる繊細な組子の建具。「和」ならではの造形が、S家の暮らしを彩っている
もともと職場の同僚だったS夫妻。棟上げの頃に生まれた5歳の長男、まもなく3歳になる次男と4人暮らし。『櫻 工務店』の建てた家と棟梁の人柄に惚れ込み、家づくりはほとんどお任せだったそう。
フリーライター