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家づくりガイド【家づくりの基礎知識やコツを学ぼう】

省エネリフォームのすすめ

公開日:2019-02-19

小川あきみ ライター:小川あきみ

省エネリフォームのすすめ

これからの時代を見据え、新築住宅では省エネ化が進んでいます。ところが、国内の住宅ストック(既存の住宅)は6,063万戸(平成25年時点)もあり、一般家庭で省エネ化を推進するには、既にある住宅の省エネリフォームに取り組む必要があります。そこで、一般社団法人 静岡木の家ネットワークが主催した「温熱教室2018」に参加し、省エネリフォームの必要性やメリットなどについて学んできました。 講演会主催:一般社団法人 静岡木の家ネットワーク  共催:IBEC(一般社団法人 建築環境・省エネルギー機構)

今回お話を聞いたのは

岐阜県立森林文化アカデミー 木造建築設計・温熱環境・省エネルギー 准教授  辻 充孝(つじ みつたか)さん

辻 充孝(つじ みつたか)

大学の芸術学部・建築学科を卒業後、Ms建築設計事務所に勤務。木造住宅の設計に取り組む一方でシステム化住宅のマニュアル制作や構造金物の開発などを手がけ、社会人学校MOKスクールの立ち上げや運営にも携わる。岐阜県立森林文化アカデミーの設立主旨に賛同し、開学時から同アカデミーに参画。

家庭でのエネルギー消費の実態


省エネリフォームについて考えるにあたって、まず、一般家庭では実際にどの程度エネルギーを消費しているのかを把握しておきましょう。
家庭でのエネルギー消費量は、1965年以降、家電機器の普及や大型化、多様化、そして生活様式の変化などによって年々増大しました。しかし、2011年の東日本大震災をきっかけに節電意識の広がりと省エネ技術の進展がみられ、エネルギー消費量は2010年をピークに減少に転じていきました。とはいうものの、人々の節電意識のみに頼るのは限界があります。今後は各家庭で省エネリフォームなどの具体的な対策が必要とされます。

 

世帯当たりの二次エネルギー消費原単位と用途別二次エネルギー消費量の推移
出典:経済産業省「エネルギー白書2017」(図【第212-2-6】)及び「エネルギー白書」(図【212-2-4】)をもとに作成

省エネリフォームで、さまざまな効果が期待大!

省エネリフォームを行うと、省エネ以外にもさまざまな効果が期待されます。
では、実際にどのような効果が得られるのでしょうか?

①光熱費の削減
建物の断熱性・気密性を高めることで、エアコンなどの冷暖房費や給湯費(マンション等集合住宅のみ)を削減できます。

②室内の温熱環境の改善
建物の断熱性や気密性、及び冬の日射取得・夏の日射遮蔽を向上させることで、足元の冷たさ、隙間風の寒さ、夏の蒸し暑さなどを改善できます。

③温度差の低減とヒートショックの防止
建物の断熱性を高めることで、住宅内で暖房をしている部屋と暖房をしていない部屋との温度差が低減し、住宅内を移動する際の寒さを和らげることができます。ヒートショックの防止にもなります。

 


④快適性の向上
省エネリフォームの際、温熱環境を良くすることで、暑さや寒さ、光、音、臭い、触感など、住宅内の快適性に関わる多くの体感要素が改善され、大幅にストレスが軽減されることになります。

 

省エネリフォームの方法 ~躯体の改修~

前項で示したように、省エネリフォームは室内の温度や熱環境を改善することでもあります。
その方法としては、大きく分けると、
①建物の「躯体」を改修して省エネ性を高める方法
②住宅内の「設備」を改修して省エネ性を高める方法 
の2種類があります。

まず、建物の躯体を改修して省エネ性を高めるには、次のような方法があります。

■建物の断熱・漏気(隙間風)の改修
建物の断熱性を高めるとともに隙間風を防いで温熱環境を改善し、省エネ性を高めます。省エネリフォームにおいては、躯体における断熱・漏気の改修が最も重要です。築年数の経った既存住宅は建物に隙間が多く、暖房をしていても冷気が侵入します。そのため、断熱改修だけでなく漏気改修(隙間風の防止策)の必要があります。

■日射熱をコントロールするための改修
冬は室内を暖かくするために日射熱を取り込む一方で、夏は室内の暑さを和らげるために屋根や窓からの日射熱を遮ることで、上階の部屋の暑さを和らげます。

■日射熱を蓄えるための改修
開口部から得た日射熱を建物の蓄熱材に蓄えて、日没後の室温の低下を軽減することで、冷暖房エネルギーを低減します。

■自然風を利用するための改修
室内の風通しを良くして、冷房エネルギー削減と快適性の向上を実現します。

■昼光を利用するための改修
住宅内に日射を取り込み、昼間の明るさと快適性(照明では得られない心地よさ)を確保することで、照明エネルギー消費量を削減します。

躯体の改修時のポイント

このように、省エネリフォームを行うにはさまざまな方法があります。
では実際にどんな改修を行えばいいのでしょうか?
それを検討するには、次の3つの項目について家族の要望をまとめておくことが大切です。

①建物のどの範囲まで改修するか?
②何を改善したいか?
③どんなレベルまで快適にしたいか?

特に、②の「何を改善したいか」、つまり、「冬の寒さや夏の暑さについて、具体的にどんな点を改善したいか」によって工事の手法が変わります。その主な例をご紹介します。

①足元の寒さを防ぎたい(冬期)
足元の寒さの原因は、
・居室内の開口部などの表面温度の低下による冷気の流れ
・床の断熱不足による床面温度の低下
・隙間風による冷気の侵入
が主な原因です。足元の寒さの原因となる箇所を特定し、断熱水準の向上やすきま風の防止のための工事を行います。

②壁や窓からの肌寒さを防ぎたい(冬期)
壁や窓から肌寒さを感じる場合は、室温だけでなく、表面温度が低い箇所を確認した上で、断熱水準の向上と隙間風の防止のための工事を行います。

③天井・屋根や外壁からの暑さを防ぎたい(夏期)
天井・屋根からの暑さは、直射日光があたって天井裏の温度が高くなることが主な原因です。また、壁からの暑さは、壁に西日があたって高温になることが主な原因です。改修工事ではそれぞれの原因を特定し、改修する箇所の断熱方法を改善すると同時に、日射熱のコントロールも検討します。

④暖房の効きを良くしたい(冬期)
暖房をつけても部屋がなかなか暖まらない場合は、まず、その部屋の断熱水準を高くすることを検討します。暖房をつけてからしばらく経っても設定室温を維持できない場合は、暖房機器の容量自体も検討します。

⑤暖房をしていない空間の室温を上げたい(冬期)
暖房していない部屋の断熱水準を高くすることで、室温が高まります。

省エネリフォームの方法~設備の改修~

省エネリフォームは、建物の躯体を改修して省エネ効果を高める方法だけでなく、住宅設備を改修して効果を高める方法もあります。具体的には次のような方法が挙げられます。

①暖冷房設備の改修
たとえば、古いエアコンを効率の良い新しい機器に取り換えるだけで、冷暖房の消費エネルギーの削減に効果があります。また、暖房設備の種類や設置箇所を見直すことで、温熱環境を改善することができます。
既存住宅の多くは石油ストーブやファンヒーターなどを使用していますが、これらを使うと室内の空気の汚染や室内側の表面結露の原因となります。また、気密性の高い家では一酸化炭素中毒の危険もあります。
ホットカーペットやこたつなどの局所暖房機器も、長時間使うとエアコンよりも多くのエネルギーが消費されるので注意が必要です。

②換気設備の改修
室内を清浄空気に保つため、年間を通じて1居室・1時間あたり0.5回以上の換気が必要です。
機械換気設備を新設、改修にあたっては、高効率ファンに取り換えたり、圧力損失の低いダクトや外部フードに取り換えたりすることで省エネを実現できます。
また、換気量を長期に渡り維持するためにメンテナンスもしっかりと行いましょう。

③給湯設備の改修
温暖地では、給湯設備が住宅のエネルギー消費量の約3分の1を占めています。最近では高効率な機器や節湯型の機器が普及してきたので、給湯設備を交換することで省エネ効果を得られます。

④照明設備の改修
省エネ効果の高い照明機器への交換や、人の手で照明をコントロールできる調光・人感センサー付きの照明機器に交換することで、省エネ効果を得られます。ただし、明るさの感じ方は年齢や視力などによって個人差があり、住まいの安全性にも関係するため、慎重に検討しましょう。

⑤高効率家電機器の改修
家電を高効率の機器に取り換えることで省エネ効果を得られます。特に、冷蔵庫、テレビ、温水暖房便座など、長時間使用するために消費電力量が大きくなりがちな家電や、使用状況によっては消費電力量が思いのほか大きくなる洗濯機、電気ポット、ドライヤーといった家電を高効率型に交換すると効果的です。ただし、せっかく家電を取り換えても、製品によっては機器の大型化や高機能化によって消費電力が増えてしまう場合もあるので注意しましょう。

⑥コージェネレーションシステムの導入
「コージェネレーションシステム」とは、電気と熱を同時に発生させる発電供給システムのことです。このシステムを導入することで、発電時に発生する熱を給湯や床暖房などに利用でき、省エネ効果を得られます。

省エネリフォームの実践に向けて

適切な箇所に、適切な改善策を施して、期待通りの省エネ効果を得るためには、事前に次のような準備をしておくと工事内容を検討しやすくなります。

①電気やガスの1年間の検針票を保管しておくこと
②浴室や洗面・脱衣室、トイレなど、寒さや暑さが気になる箇所の室温を毎日定時に計って書き留めておくこと

また、最近の手法では、省エネリフォームによる改善前と改善後の性能比較をすることもできます。省エネリフォームを検討するのであれば、実際にどのくらい変化があったか測る意味でも性能比較の実施をお勧めします。

(左)今回講演をしていただいた辻充孝氏 (右)主催「一般社団法人 静岡木の家ネットワーク」環境共生WG長/足立建築 足立操氏

また、上記、講師と企画者のお二人からは、以下のようなコメントをいただきました。

「2020年に予定されていた省エネ基準義務化は、残念ながら見送りの方向で進んでいます。その判断がなされたのは、『多くの住宅事業者や設計事務所が建築物のエネルギー消費性能を計算できないから』という、プロとしては非常に情けない理由からです。実際に性能の低い家で暮らさなければならない住まい手のことを考えれば、これはあってはならないことですが、一方で住宅業界が立ち遅れているのも紛れもない事実。一日でも早く義務化できるよう、住宅事業者・設計事務所のレベルアップに努めたいと思います」

いかがでしょうか? 今回ご紹介したように、省エネリフォームは住まいの温熱環境の改善と大きな関わりがあります。室温を快適に保ち、住宅内の温度差をなくすことは、熱中症やヒートショックの予防など、住まう人の健康維持にも大きく役立ちます。これからもし石油価格の高騰が進めば、省エネ自体も私たちの暮らしにいっそう必要となってくるので、早めの対策をおすすめします。
一般社団法人『静岡木の家ネットワーク』では、地域の人々が末長く安全・快適に暮らせる住まいを提供するために、住まいの温熱環境をはじめとしたさまざまな分野で研鑚を重ねています。これからも同法人の取り組みを随時ご紹介していきたいと考えていますので、ぜひ皆さんの家づくりにお役立てください。

ライターのご紹介

小川あきみ
小川あきみ

フリーライター

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